税法改正で賃貸マンションを取得した場合の消費税還付にご注意

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平成22年度の税制改正で、消費税の課税事業者を選択した場合、課税事業者である期間中に購入・取得した調整対象固定資産があるときは、その取得・購入した期間を含む3年間は課税事業者を強制適用されることになりました。

改正前は課税事業者を選択した場合、課税事業者の強制適用は2年間でしたが、この改正でどういう影響があるのでしょうか?

1.課税事業者の選択

消費税は課税事業者が納税義務を負います。

課税事業者とは、基準期間(当期の前々期)における課税売上高が1,000万円を超える場合及び課税事業者を自ら選択している場合などが該当します。

消費税の計算方法には原則方法と簡易課税とがあり、事業者が選択することができます。ただし、簡易課税制度は基準期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者しか適用されません。

原則方法は、売上に係る消費税額から仕入れに係る消費税額を差し引いた金額を納付する方法ですが、この仕入れには機械や建物の購入といった設備投資の費用も含まれますので、差し引いた金額がマイナスになることがあります。 この場合はそのマイナス額を消費税の還付額として事業者が受け取ることができます。

簡易課税制度は、売上に係る消費税額に定められた割合を掛けて納付税額を計算する方法ですので、仕入れに係る消費税額は一切考慮されませんので、消費税の還付は発生しません。

ここで、消費税の還付のポイントは、課税事業者であることと簡易課税制度を選択していないことが挙げられます。

 

2.課税売上割合

消費税を考える上でもう一つのポイントが、課税売上割合です。

消費税は大まかに言えば課税される品目と非課税の品目及び対象外のものに区分されます。

課税売上割合とは、非課税の売上と課税の売上の合計額のうちに課税の売上額の占める割合を言います。

非課税売上の代表的なものは、土地の売却収入、居住用のマンション等の家賃収入、貸付金などの利息収入があります。

課税売上割合は95%未満の場合、先の仕入れに係る消費税額の計算に用いられ、消費税の納付額に影響を与えます。

例えば、その期間の課税売上高が税抜きで2,000万円で、非課税売上高が500万円だった場合、課税売上割合は

2,000万円/(2,000万円+500万円)= 80% になり、95%未満になります。

この場合、仕入れに係る消費税額はこの割合で調整され、例えば売上に係る消費税額から差し引かれる金額が減少し、その分、納付する税額が増加します。

課税売上割合が低くなればなるほど、差し引かれる金額が低くなりますので、その割合によっては設備投資を行って仕入れの金額が増大しても、還付される消費税額が減少し、もし割合がゼロであれば還付額はゼロになります。

ここでのポイントとして、消費時絵の還付には、課税売上割合を上げることが重要と言えます。

 

3.調整対象固定資産

消費税法では、原則方法を採用している課税事業者が設備投資等で税抜価格が100万円以上の資産(棚卸資産を除く)を購入・取得した場合、その後の期間で調整する規定があります。 この調整対象となる資産を調整対象固定資産と言います。

表題のケースで重要な規定は、課税売上割合の著しい変動があった場合の調整対象固定資産の調整です。

具体的には、調整対象固定資産を取得した期間の課税売上割合とその期間以後の3年間の期間の課税売上割合を通算した割合を比較して、その変動が大きい場合は、変動差に係る部分を3年目の期間の消費税で調整するというものです。

例えば、取得した期間の課税売上割合が100%として、その翌期及び翌々期と通算した課税売上割合が50%であったら、差引50%の変動がありますので、取得した期間で調整対象固定資産に係る消費税額で考慮した部分のうち変動部分を3年目で、納付額に加算されることになります。
 

ここのミソは、調整対象固定資産に係る消費税額は3年目で見直しと言うことです。

 

4.改正前と改正後

(1)改正前

事業を新たに開始した者が、居住用賃貸マンションの建設・購入した場合で、その金額が税込で2億1千万円とします。

この事業者がこの費用の内、消費税分の還付を受けようとするには、次の2点が必要になります。

①原則方法を選択する課税事業者になる

②課税売上割合を高くする

居住用賃貸マンションの家賃収入は、非課税になりますので、②を考えれば、事業を開始した年度は賃貸を開始しないで、他に建設場所に自販機を設置するなどして、課税売上のみを計上すれば、課税売上割合は100%になります。

例えば、自販機収入を年間で126,000円だったとすれば、売上に係る消費税額は6,000円になります。先の通り課税売上割合は税抜価格の120,000/120,000=100%です。

仕入れは、判りやすく建物の建設以外に無かったとした場合、その税額は1,000万円になります。

その年の消費税は、 6,000ー10,000,000×100%= -9,994,000円 

つまり 9,994,000円の還付になります。

以後、課税事業者の選択は2年間の強制適用でしたので、その2年間は課税事業者を続けて、3年目からは課税事業者を辞める選択をすれば、家賃収入は非課税売上ですので、課税売上高が1,000万円を超えない限り免税事業者となり、初年度の消費税の還付額は貰い得になります。

これが改正前の状態でした。

(2)改正後

まず、事業を開始した年度に調整対象固定資産(賃貸マンション)の取得をしてますので、課税事業者を3年間強制適用されます。

併せて、課税売上割合の著しい変動があった場合の調整が適用されます。

仮に、その事業者の2年目からの家賃収入を年間10,000,000円とし、毎年の税抜きの課税売上は自販機の120,000円のみとして計算しますと

①仕入れをした年度の課税売上割合 120,000/120,000 = 100%

②2年目及び3年目の課税売上割合 120,000/(10,000,000+120,000)ですので、3年間の通算課税売上割合は

 (120,000+120,000+120,000)/(120,000+10,000,000+120,000+10,000,000+120,000)

 = 0.0176817....  1.76817..% となります。

この場合。3年目で調整される消費税額は

 10,000,000×100% - 10,000,000×1.76817..% = 9,823,183

となり、3年目にこの金額分の消費税額が加算され、納付することになります。

多少は還付額が上回ったとはいえ、ほとんどが回収されることとなり、消費税還付スキームの利点は無くなります。

 

6.今後の注意

この改正は過去の分の遡及はありません。あくまで、平成22年4月以降の事業年度からの適用になります。

なお、この改正は賃貸マンション等の消費税還付対策のためのみの適用ではありませんで、開業時に設備投資をした場合の調整対象固定資産の規定は、消費税の原則方式を選択している課税事業者であれば全てに適用されます。

通常の事業者は3年間で課税売上割合が極端に変動するケースは少ないと考えられますが、事業を開始する場合には、消費税還付を考えると同時に、向こう3年の売上や消費税額の予想をして、その結果課税事業者を選択すべきかどうかも含めて検討することが必要と思われます。