粘れ、あきらめるな!

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上司や先輩から叱られ、つらいこともたくさんある。いろいろなお客さんを数え切れないくらい訪問して、断られる毎日。
でも、営業はつらいばかりではありません。そんな厳しい中でもお客様が話を聞いてくれて、商品を買ってくれたとき、大きな喜びとなります。人と会う楽しさ、人とつながって、それが人脈となる喜び。深い信頼関係を築くことに営業の醍醐味を見いだすことができます。と営業について書いてみましたが、実際は、多くの新人(?)営業マンが、営業の喜びを得られることもなく、ドロップアウトしているのではないでしょうか?

(way to the Top 2013年12月号から)

ブルーオーシャン
理想をいえば中小企業は、ニッチ市場でそれなりのシェアを獲得し、営業に力を注がなくても、好業績を獲得したいものです。イメージとしては、誰も来たことがない南国の砂浜を発見し、その美しいビーチをたった一人で独占している状態(ブルーオーシャン戦略)です。しかし、実際はたくさんの同業他社がいる中での血で血を洗う(レッドオーシャン戦略)状態になっています。
競合企業の戦術に併せて自社の戦術をコントロールし、ある時は少し利益が、そうでなければ赤字がでる厳しい戦いです。もちろんそこまで緻密な戦術の展開ができていれば良いのですが、これがなかなか難しいのです。

営業が重要だ!
他社と変わらない商品やサービスを、営業力で売ることで生存のための利益を確保しなければなりません。営業行為が生存のための肝なのですが、この営業がなかなかうまくいきません。
ウィキペディアによると営業職とは「販売を主たる業務とするが、ひと口に営業職と言っても、実際にはその仕事内容は様々であり、業界・業種、扱う商品・サービスあるいは会社の規模などによって大きく異なるともされる。ただし、いずれにせよ、営業職の原点は、人と人とのお付き合いであるという点では同じとも、「コミュニケーション能力」と「意思決定を促す力」が必要とされる点では同じだともされる。」とあります。

優秀な営業マン
このことからイメージされる営業職とは、海千山千の敏腕営業マンが、あらゆるコネクションを使って、商品やサービスを売りまくり、そのような者の集団が営業部隊ということになります。
この様な凄腕な営業マンを育てるには、時間がかかるのは明らかです。しかし、中小企業で、営業が成長するのをゆっくりと待っている時間はありません。今、このときに売上がほしいのですから。
では、どうするか。同業他社から優秀な営業マンを引っ張ってくる。しかし、これにも問題があります。そもそもその人物が本当に優秀かどうかわからない。よくあるパターンは、単にその時、良い顧客を会社からあてがわれていた為に売上が上がっていたかもしれないのです。隣の芝は青く見えるものです。実は根っこに病気を抱えたトラブルメーカーかもしれません。
仮に優秀な人物だとしても、もっと他に良い条件があれば去って行く可能性も見逃せません。

一般的な営業の特徴
① 仕事の成果が、その仕事をする人の資質や能力によって大きく違ってくる。
② 人と人の信頼関係の上に、取引がおこわなわれる。
③ 営業マンの行動の中身やプロセスは他人には見えないので、営業マンの業績は結果で評価される。

一般的な営業の問題点
① 新しい人への引き継ぎが難しい。
② 営業マンとしての能力を上げるための教育が難しい。
③ 営業マンの間で不公平や運不運が働く。
④ 営業の過程で何が起こっているかわからない。
⑤ 営業現場に対してマネジャーが判断できる根拠を持たない。

③の営業マンの間で不公平や運不運が働くについて、例えば、顧客から「埋め合わせはするから、何とかしてくれ」と言われれば、信頼関係が最も重要なその優秀な営業マンは、会社のルールを変えてでも、他の顧客に迷惑をかけてでも、自分の顧客のために商品を供給します。
情としては理解できますし、その努力を買いたいと思います。しかし、会社の中と外に不満が生まれ、蓄積していれば、いつか爆発します。
この様なことは、営業マンが優秀であればあるほど、起きていても不思議ではありません。
もう一つ、⑤の営業現場に対してマネジャーが判断できる根拠を持たないという点です。日々の営業マンの活動によって構築された顧客との信頼という関係は、とても重要なもので、営業マンの業績であるとともに会社の業績でもあります。しかし、信頼関係の構築の過程は、マネジャーには見えません。従ってマネジャーにできることは、「おまえを信用している。がんばれ!」といった精神論しかありません。
営業マネジャーは、体育会系の乗りで、「がんばれ、あきらめるな。」とか「社内でもたもたしてるんじゃない。営業行ってこい!」という具合に叱咤激励が仕事の中心となります。

組織営業(脱 属人営業)
住宅メーカーは、家がほしいという顧客にアプローチし、家造りの企画計画、契約、施工という具合に進み、更に居住後のアフターケアがあります。積水ハウスの組織営業について見てみましょう。

展示場への誘導
展示場の役割は、来て頂いた潜在顧客もしくは顕在顧客のデータベースを作ることです。展示場にいる社員は決して、売り込みをすることはありません。ただ、自慢の展示場を顧客の要望に応じて、見学のお手伝いをするだけです。その後、希望者にアンケートを書いて頂いて、データベースを作成します。

納得工房への誘導
ここで初めて営業マンが登場しますが、このときの営業マンの仕事はは、潜在顧客もしくは顕在顧客を納得工房にお連れすることです。
この納得工房は、専門の研究者から説明を受けながら、家造りについていろいろ実験する場所です。調理台の高さを変えて自分に合った高さを確かめることができたり、調理器具も揃っていて、実際に調理することもできます。食器棚との距離を確かめることで使いやすいキッチンとはどんなものを理解してもらうことができます。良い家造りを具体的にイメージしてもらうのが納得工房の役割です。

名人芸
もし営業マンが一人で顧客を探し、契約をし、施工管理、アフターサービスまでをこなそうとすれば、大変な能力がいることがわかります。組織的バックアップ無しでは潜在顧客を見つけられません。最悪なのは、やっと見つけた一つの顧客を、自社営業マンで取り合っている業界も見られますね。
潜在顧客をやっと見つけたところで営業マンが良い家造りについて説明をし、良い家のイメージを持ってもらうことで顕在顧客となり、その後、具体的設計、そして契約といった複雑な仕事をこなすことは不可能です。
しかし、中小企業においては営業マンがこの様な名人芸を習得することを望んでいます。
積水ハウスの営業行為のポイントは、分業とプロセス管理です。積水ハウスは名人芸的な営業を卒業することで、営業マンに負担をかけない効率的な営業を目指しているのです。

プロセス管理
営業マネジャーは、データベースに基づいて、納得工房にお連れできるかどうかが、一つのポイントとなります。マネジャーは、データベース上の潜在もしくは顕在顧客に営業マンを割り当て、「潜在顧客であれば納得工房に誘導できるかどうか?」を調査させます。顕在顧客であれば、家造りの進捗度はどの程度進んでいるかを営業マンに調査させ、当社の顧客となることができるかどうかを判断します。その後は、設計段階に進んだ顧客、契約まで進んだ顧客といった具合に、顧客をその各々のステージ毎にを管理することができます。各々のステージの平均的な滞在時間が計算できますから、このプロセスをきちんと管理することで売上見込みを立てることができます。

営業マネジャーの仕事が変わる
営業マネジャーは、これまでの叱咤激励ではなく、指示を与え、各営業マンを管理することとなります。属人営業であれば夢のような世界です。各々プロジェクトを把握し、進捗状況を管理することができるのですから、顧客の特性や嗜好に応じて追加の営業マンや専門家をタイミングよく投入することも可能で、成約率を上も上がることでしょう。

さあ、新しい年です。営業をしましょう!(自分自身に言っているのではありません。)

参考文献 『営業が変わる 顧客関係のマネジメント』著 石井淳蔵