6年前に格差・公平について論文を書いた時のメモ

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税金について、格差・公平の見地から論文を書いた時のメモを、ちょっと、引っ張り出してみました。

 

                                   公平・格差

1 法の下の平等(P1~4)

1 平等観念の歴史

 人権の歴史において、自由と共に、個人尊重の思想に由来し、常に最高の目的とされてきた。

 19世紀~20世紀

    市民社会における形式的平等(機会の平等)→結果的に不平等ともたらす。

    持てる者はますます富み、持たざる者はますます貧困におちいった。

    

  20世紀

    実質的平等(結果の平等)

    ↑

    社会福祉国家

    ↑

    社会的・経済的弱者に足して、より厚く保護を与え、それによって他の国民と同等の自由と生存を保障していくことが要請された。

 

 歴史的には、形式的平等から実質的平等を重視する方向へ推移している。

 

2 法の下の平等

① 法内容の平等

「法適用の平等」と「法内容の平等」を意味する。

日本国憲法が憲法と法律を質的に区別し、裁判所による法律の違憲審査を認め、人権を立法権を含むあらゆる国家権力から不可侵なものとして保障していることと対応

② 相対的平等

種々の事実的・実質的差異を前提として、法の与える特権の面でも法の課する義務の面でも、同一の事情と条件の下では均等に取り扱うことを意味すること

 

2 租税公平主義(P5~10)

1 意義

①近代法の基本原理である平等原則の課税分野おける現れである。

「担税力に即した課税」と「公平」ないし「中立性」

担税力の尺度→所得・財産・消費

消費税は、逆進性となりやすい

所得・財産→優れており、累進税率の適用が可能である。

所得→基礎控除その他の人的諸控除や負の所得税を通じて最低生活水準の保障を図ることが可能。所得の全てが正確に把握されるわけではなく、また財産及び消費も担税力の尺度である事にかわりはないから、実際の制度においては、所得税を中心としながら、タックスミックスでバランスの取れた税制を構築することが、担税力に即した税負担の配分のために好ましい。

②公平ないし中立性の原則

同様の状況にある者は同様に、異なる状況にある者は状況に応じて異なって取り扱われるべき事を要求する。

2 立法との関係

累進所得税が平等原則に反しないかどうか                          

①形式的平等の観点からすれば、累進税率は不平等である。

②厚生経済学の立場から見れば、所得は大きくなるに従って限界効用が逓減し、従ってその担税力は増加するから、比例税率よりはむしろ累進税率の方が実質的平等の要請に合致する。

③憲法25条が目指している社会国家の実現のためには、富の再分配が必要不可欠であり、かつ富の再分配のためには累進税率が最も有効適切な手段の一つであるから、累進税率は合理的な差別を構成し、憲法14条1項に反するものではないといえる。

 

※厚生経済学 社会の経済的厚生を分析の対象とし、経済政策の理論的基礎を明らかにしようとする経済学の一分野。創始者はピグーで、主著「厚生経済学」の題名に由来する。

 

3 租税法における水平的公平の意義(P11~19)

1課税の公平に対する2つの意味

水平的公平=等しい状況にあるものを等しく扱う

垂直的公平=異なるものを異なって扱う

 

2水平的公平にについては、その独自の意義を否定する見解が有力に唱えられるようになった。その底流には、最適課税論の影響がある。

恣意的な差別的課税の禁止という意味を、水平的公平の中に見いだすべきである。(P18)

 

①中立性(P13)

水平的公平と中立性は、類似した概念であるが、視点を異にする。水平的公平は、選択を行った後の結果を比較する。中立性は、選択を行う際の意志決定に着目する。

 

②自己責任(P14)

自己責任の観点を徹底するならば、自由選択の結果であり、水平的公平の観点が問題にならない、という考え方がある。しかし、仮想の自由選択を根拠にしている点で説得力を欠く。

 

③効率性

水平的公平が問題になる局面は、一定の条件の下で、資源配分の効率性の問題に置き換わってしまう。

課税により人々の行動が変化すると考えるならば、市場における調整過程が終了した後に選択を行った個人について水平的不公平は存在しない。

 

④垂直的公平(P16)

等しい者を等しく扱うことと、異なる者を異なって扱うことは、同じ原理に帰する。これに対しては、論争がある。

 

⑤平等空虚論(P16)

「等しい状況にある者を等しく扱え」という命題が内容を欠く空虚な定式であるという批判。問題の核心は、「等しい状況」にあるかどうかを判断する基準が、この定式の中には存在せず、外から注入しなければならないことにある。

「等しい者を等しく扱え」という命題は恣意的な取り扱いを明確に拒否しており、その限りで空虚とはいえない。利益、能力などの規範の充填自体は何ら不純なことではない、肝心なのはその根拠を明示的に示し、配分的正義の構想へとつなげる努力である。

 

4 最適課税論

 

 

5 税制と公平負担の原則(P20~27)

1利益説 租税は国民が国家から受ける保護ないし利益の対価であるという考え方

アダムスミス「あらゆる国家の臣民は、各人の能力できるだけ比例して、言い換えれば、彼らがそれぞれ国家の保護の元に享受する収入に比例して、政府を維持するために、貢納すべきものである。」=国家は国民の間における富の分配状態に介入すべきではない。

 

2能力説 各人の担税力に応じて国民の間に配分されるべきだ。

 

3憲法

私有財産制度と資本主義的経済体制を前提とし

福祉国家ないし社会国家の理念の下に生存権を保障していること。

社会福祉政策ないし社会保障制度が必要

累進税率による富の再分配が不可欠である。

 

4所得税の類型

① 分類所得税

    所得税が比例税率によっていた時代の遺物である。

② 総合所得税

  各種控除並びに累進税率とよりよく結びつく得るという点では、総合税率の方がはるかに優れているといえる。

5 基礎控除と累進税率に対する若干のコメント

基礎控除・扶養控除等は、人の所得のうち、本人及び家族の最低限度の生活水準を維持するのに必要な部分は担税力を持たない。

6 我が国における所得税制の発展とその問題点

①シャウプ勧告

総合累進所得税は、シャウプ勧告によって徹底されることとなった。

何らかの理由に基づきある種の所得を課税の対象から除外するとか、ある種の所得を分離して低い税率を適用することに対してきわめて厳格な態度を取り、原則として一切認めていない。

勤労所得は資産所得よりも低い担税力しか持たない。

 

6 税の公正への接近(P32~42)

1 公正の目的は常に税構造を規定するものとはいえないが、税構造を考える上で基本的基準となるものである。「公正な負担」という概念をどのように定義すべきかについての意見の一致があるわけではない。

2 利益説

個々の納税者が公共サービスから受ける便益に応じて負担するような税体系こそ、公正な体系といえる。租税=支出政策の基準といえる。

特定の納税者の支出から受ける便益が知られなければならない。

公共サービスにかかる費用を納税者に割り当てることができるが、移転支出の財源に充てる租税及び再分配の目的のために役立たせる租税を取り扱うことができない。従って、利益課税が公正であるためには、はじめから適正な分配状態の存在が想定されねばならない。

民主主義体制の下では、利益説の適用に近づく傾向がある。大多数の人々は、両面を比較して自分たちが利益を受けない計画案に対して支持することはないだろう。

3 能力説

税問題が支出決定とは関係なく独自に取り扱われる。

能力がいかに測定されるか知らなければならない。

再分配機能をそのうちに含むという利点を持つが、公共サービスの決定を考慮することができないという不利をもつ。

 

4 担税力の尺度としてしての所得と消費

所得ベースに関しては、家計勘定の源泉面から見られる所得があらゆる形態の資産の価値増加分の合計としてとらえるべき事を意味する。ある個人の経済力すなわち担税力は、賃金、給与利子又は配当のような貨幣所得の形にしろ、持ち家の帰属家賃のように帰属所得の形をとるにしろ、あるいは、資産価値の実現又は未実現の増分の形をとるにしろ、所得が発生したときに増加したといえる。

消費ベースが消費のみを含むに対して、所得は純資産の増分プラス消費に等しいことから、消費税は貯蓄された所得分を除外する点だけ所得税と異なる。

 

5 どの課税ベースがよいか

① 背景

ホッブスまで遡れば、人はその利用するものに基づいて税を支払うべきだ。

所得税は現在消費と将来消費間の選択にゆがみをもたらすが、消費税はそうではない。このことから、ある想定の下で、消費税がより効率的であると結論づける。

貯蓄及び経済成長に対してより望ましいといることから、経済政策が成長加速を目指す場合に消費税が勧奨される。

2つの課税ベースの選択は、いずれが担税力のよりよき尺度となりうるかを検討することによって行われる。

② 公平の問題

我々の基準は担税力が潜在的消費によって測られるべきものとなろう。

 

結局のところ、課税ベースの選択は理論的真空で行うことはできない。それは課税が実施される経済の構造に依存し、更にその構造が与える「税手続き」にも依存するだろう。

 

 

7 ジニ係数の拡大

1 「日本の経済格差」 P122

所得再分配調査(厚生省)のデータを基に、我が国のの所得分配の不平等は、課税前所得と、課税後所得ともに急激に高まっている。ここ1年あまりの間に、時に係数が0.1前後上昇しており、短期間のうちにこれだけ不平等の高まった国はさほどない。

 

2 批判

「日本の所得格差と社会階層」P56~

家計調査報告、国民生活基礎調査、所得再配分調査、全国消費実態調査のデータを基にジニ係数を算定すると、所得再分配調査のジニ係数が非常に高く、上昇スピードも高い。(P58)所得再分配調査の当初所得には、公的年金を含まないが、退職金を含んでいる。再分配所得で計算すれば、ジニ係数は低下する。

結論として、日本の所得格差の変化の特徴は、所得格差拡大の主要因は人口高齢化であり、年齢内の所得格差の拡大は小さいということである。しかし、生涯所得の格差を代理する消費の格差の動きは、所得格差とパラレルか、所得格差の拡大よりも大きい。50歳未満で顕著に観察される。

 

8 閉鎖性

1「実績、努力、必要、均等」調査(SSM調査)P128

① 特徴

現実の配分原理には、「わからない、無回答」がきわめて多い。

理想の配分原理においては、実績と努力以外の必要や均等が合わせて15%前後しかない。

理想と現実のねじれ。理想においては、実績が全体で20%未満であるのに現実では半数以上である。40歳未満の女性でこのねじれが激しい。

評価

② 評価

女性は平等な競争をさせてもらえていない。

女だろうと、男だろうと、そもそも「実績ではなく努力で」という考え方自体が実績を上げられない人間のいいわけにすぎない。

学歴が高い人ほど、実績と答える人が多くなる。(P130)日本では高学歴ほど収入が高いから、実績か努力家は社会的地位に関連している。

 

③ 相続される学歴

実績主義の人は、本当に自分の力だけでやってきたのだろうか。

実績主義には高い学歴の人が多く、高い学歴を生かす職業に就いている。それだけではなく、その父親の学歴も高いのである。SSM調査によると彼らの高い学力は、父親の高い学歴を引き継いだものである。(P133)                 」

世代間再生産のメカニズムは、学歴などの従来型の知識に限られない。いわゆる「情報化」などに関わる新たな知識にも働いている。(P134)95年SSM調査における、「パソコン・ワープロ」の所有に関する調査による。これらの所有が示すものは、高度な知識・能力とされるものへのアクセスの良さであり、「優れた知識」とされるものをいち早く取り入れるエリ-トなのである。知識エリートの世代間再生産はもっと大きな収入や地位の差を生み出すだろう。

著者が取り上げているのは機会の平等・不平等である。機会の平等は自由な競争社会の大前提だが、市場化すれば自動的に機会の平等が実現されるわけではない。そのような世界は経済学の数式の上にしか存在しない。現実の市場に参加する現実の人間は決してのっぺらぼうの何も書き込まれていない白紙ではない。1人1人がそれぞれ違った背景を持ち、それによる有利不利に大きく左右される存在なのだ。(P136))

機会の平等を結果の平等からのアナロジーでとらえがちだが、機会の平等は結果の平等とは全く異質な原理である。両者の違いを単なる基準点違いだと誤解している人は多い。だが、もっとも本質的な違いがある。それは、結果の平等は、目に見えるが、機会の平等は直接目に見えないということである。

④ 批判(P70))

階層間移動の閉鎖化ないし階層再生産の拡大というのは、データの大勢によっては、サポートされていないこと、それを示しているのはただ一つ、「40歳時W雇上」だけである。

⑤ 批判に対する回答

男性だけのものである以上、40歳時点の職業がわかるサンプル数が少ないために統計的な信頼が劣る。(P109)

第2章で、世代間移動は20年以上の時間をかけて起こる出来事だと述べたが、全く同じことが機会の平等にも当てはまる。機会の不平等は20年以上の時間をかけて、そして、SSMのような調査を通じてようやく目に見えてくるのである。(P138)

 

9 中流意識に関して

「9割中流」という調査結果は、設問の性格と選択肢の設計によって必然的に生じたもので、日本社会について何かの情報をもたらすものではない。(P119)

世界のどこの国でも、「中」が9割前後あるいはそれ以上になるのである。

 

10 教育

1 1980年代の臨教審(P78)

 ゆとり教育

 できる人とできない人をわけて教えるといった主張、フランスのグランゼコールみたいな学校を作るべき。

 トヨタなどが作ろうとしている学校もイートン校のような学校を目指している。

 フランスでグランゼコールに入る子弟は、上流階級の子弟が圧倒的に多い、フランス政府は、労働者階級の子弟の割当制といった政策を採用

 

2 教育の重要性

教育の場における階層の問題を取り上げているかというと、教育は、21世紀型の産業社会の中では、所得に結びつく能力、あるいは影響がある能力を形成する場であるから。

 

調査結果を見ていると子供達が自分で調べたり、考えたりする授業への関わり方や、「やる気」自体が社会階層によって違ってきてしまっている。インセンティブ・ディバイド(意欲格差)社会の到来。

具体的には、社会階層別の学校外での学習時間と、成績は落第しない程度でよい、と判断する学生の比率を示したもの。(P88)どの階層の子弟でも学習時間は減少しているが、上位と下位には、相当な開きがある。

国立大学医学部に入学する学生は、医者や裕福な家庭の子弟が多い。階層再生産の典型例となっている。(P90)

 

SSM調査によって、親の職業や学歴と言った要因が、子供の学歴達成に一定の影響があり、しかもそれは戦後の長期間に割ったってさほど変化がないことがわかっている。(P88)教育の現場では、 学校が社会の不平等を再生産する装置であると見なさず、むしろ学校が生徒の学力によって序列化していることを批判する。

 

11 モデル

アメリカイギリス両国とも、規制緩和が強く進み、政府が所得再分配制作を強く実行しない国である。

貧困率(P94) アメリカイギリスが群を抜いて高い

賃金分配のの不平等性(P94) 賃金格差が拡大

なぜアメリカでは問題とならないか(P95)

 様々な要因とともに効率化の達成のために、平等性(公共性)が犠牲にならざるを得なかった。

 

北欧を手本とするには問題がある。

 どこも小国である。(P75)

 断種政策を進めてきた歴史(P76)

 最初の出発点で、強制的に強く均質化しておいて、その上で比較的平等な社会を作ってきた可能性がある。

 

12 機会の平等とは何か

1  機会の平等の定義

①公平な参入機会

 

参考文献

1.日本の経済格差(橘木俊詔 岩波書店 1998年)

2.不平等社会日本(佐藤俊樹 中央公論新社 2004年)

3.財政学を築いた人々~資本主義の歩みと財政・租税思想~(大川政三編著 小林威 ぎょうせい)

4.日本の所得格差と社会階層(樋口美雄+財務省財部総合政策研究所 編著 日本評論社 2003年)

5.再生産論を読む バーンスティン,ブルデュー,ボールズ=ギンティス,ウィリスの再生産論(小内透 東信堂 1995年)

6.封印される不平等(橘木俊詔編著 東洋経済新報社 2004年)

7.階級社会日本(橋本健二 青木書店 2001年)

8.00年代格差ゲーム(佐藤俊樹 中央公論社 2002年)

9.階層化日本と教育危機(刈屋剛彦 有信堂 2001年)

10.日本の所得分配と格差(宮島洋/連合総合生活開発研究所 編著東洋経済新報社 2002年)

11.第2巻 所得税の理論と課題(金子宏編著 税務経理協会 平成8年)

12.日税研論集第54号 「公平・中立・簡素・公正の法理」(財団法人日本税務研究センター 平成16年)